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太陽が東から南へと移動する間
その場所にいたのは 色づいた落ち葉
それから数時間の間に起きた 出来事は
この鳥しか知らない

昨日 翳り始めた 玄関の前で見つけたのは
スズメよりも大きな一羽の鳥
地面に付いている筈の足と
柔らかな淡い黄色のお腹を私に見せながら

薄暗さに包(くる)まれ 冷たいコンクリートの上に
鳥は独り 横たわっていました

少し開いたままのくちばしから小さな舌
少し閉じかけたままの黒く小さな瞳
“最期に見た景色は どんなだった?”と
左手にそっと乗せた鳥に 撫でながら問いかける

ふわふわの羽毛に包まれた身体はとても軽く
でも冬を含んだ風のように冷たく
私の手の平の熱に徐々に温まっていくのが
何だか とても切なかった

これも一つの出会いなのかもしれない…。

スコップで穴を掘って 
側にあった黄色の花を敷き詰めて
その鳥を静かに横たわらせた

「おやすみなさい。」

そう呟きながら 
こうして庭に埋めた小さな亡骸は
もう どれくらいになるのでしょう

今朝 朝日に照らされた柿の実を
美味しそうに啄ばんでいる鳥たちを見つけました
あの淡い黄色のお腹をした 鳥と同じです

昨日の今頃は そこで 
仲間と一緒に こうして 
啄ばんでいたのかな…。



©Misyou Kiduki

ある歌を あの頃 唄えなかった
その前までは好きで唄っていた歌
Coccoの「Raining」

歌詞と重なってしまった現実
「涙雨」が降ると言われるその日は
その人の本質を表すように晴れでした
天気予報では 雨だった日

いつからか また唄えるようになった歌
時々 目元に力が入ってしまうけれど
あの頃は声が詰まって唄えなかったサビ
「それはとても晴れた日で…」

雲間からのぞく青空を見つける度に
思い出すでしょう あの日
でも 唄うでしょう この歌 これからも
「あなたが もういなくて…」と。

今日も どこか あの日に似ていたよ

時が癒してくれていた
痛みも 哀しみも 柔らかに
例えば 今日が雨の日でも
涙が降らないぐらいに…。



©Misyou Kiduki


秋にしては いささか温かすぎる午後
高枝バサミを右手に掴んで
裏の畑で 今年最後の柿捥(も)ぎです

さてっと見上げたそこには 
空色に映える オレンジ色の果実がたわわ
すぐに割れてしまいそうなほど 細い枝の先々で
不釣合いなほどに大きな柿の実が 風に揺られていました

全部は捥がないで 少しだけ残して置きましょう
いつも楽しいおしゃべりを聞かせてくれる鳥たちへ
ほんの気持ですが 少し早いですが お歳暮です

そして 今日捥いだ中で一番美味しそうな柿の実を
柿が大好きだった 父へ捧げます



©Misyou Kiduki


猫っ毛の私が愛用しているのはツゲ櫛
静電気が発ちにくい所がお気に入り
でも そんなにいい品物ではなくて
何百円台で買えてしまう小ぶりのモノ

歯が折れてしまった櫛は
使うものではないと聞いていたけれど
たとえ 1本折れ 2本折れしても
使ってあげないと なんだか可哀想でしょう?

でも さすがに5本折れではお役ごめんですね…。
今まで“お疲れ様でした”“ありがとう”

今日は 昨日買ってきたばかりのツゲ櫛さん 使い始め
先代の櫛よりも大ぶりのそれに
心の中で“よろしくお願いします”

さてっと 髪を1度梳き 2度梳き 3、4と梳き…「パキッ」
「え?」 少し間を置き 髪からポトリ
「あれ? もう折れちゃったのですか!!」
その小さな残骸を拾い上げた時の 何ともいえない複雑な気持ち

思わず出た「私の頭は金属じゃないのに…」という私の呟きを
聞いていた母は 苦笑い

おっかなびっくりと 髪を梳かし始めた私の横で
昨日の洗濯物乾かし中の
乾燥機の規則的な回転の音は
まるで 空しさを引き立てるBGMでした

そんな いつもとは一味違う 朝のワンシーン
今日の私の はじまり



©Misyou Kiduki

雨が降る音も
雨に閉ざされた静かな空間も好きだけれど
家の中にぶら下がっている
色とりどりの洗濯物を眺めていると 溜め息
気が滅入ってくるのは 主婦ゴコロ?
結婚もしていないのに リアルに切ない…。

なんだか 悪寒?
背筋を首筋を背後から ソヨ〜リ ソヨ〜と撫でていくのは
何処からともなく忍び込んだ 秋雨の香りのする隙間風たち

立冬を過ぎて 冷たい雨
日本家屋の築何十年の我が家は
キッチリと戸締りをしていても 油断も隙も在りすぎです

本当はストーブを付けたいところ
でも 今年はまだ 我慢我慢です
灯油代もばかにならない昨今
もう一枚、羽織ってしのぎましょう
着膨れしても この際 気にしません

雨の降る音は 1/f揺らぎ α波
洗濯物のカーテンも 悪寒を誘う隙間風たちも 
ほのかに漂う柔軟剤の香りも 意識の海へとすべて流して
ゆっくり何も考えず 読書の秋と洒落込もうかな?



©Misyou Kiduki


昨日の 丁度 今頃
南向きの玄関の外壁に 若草色をした大きなカマキリ
瞳の中には きっと
私と同じく 澄んだ秋の青空が広がっていたでしょう

少し空気は、秋よりも冬に香りを変えていて
時折 肌寒く感じたけれど
その場所は とても 温かそうだね
太陽の光は とても 穏やかだね

だから私も 一緒に日向ぼっこしたい ところだけれど
そうは問屋が卸してくれないのが 人間の窮屈なところ

昨日よりは 雲がひしめき合っている空
昨日よりも まばらな太陽の光
それでもやっぱり この場所は日向ぼっこの特等席で
でも あの大きなカマキリの 姿はありませんでした

今日はどこで 日向ぼっこをしているのでしょう

きっと この南向きの玄関の外壁よりも 
温かな特等席を キミは見つけたんだね



©Misyou Kiduki

黄昏よりも少し早い、まだほの暗い時間帯でした
部屋の窓を開けて、戸を閉めようとした時のことです
5メートルほど先にいた、ホルスタイン模様の猫と目が合い、
その時、「もしや!!」と思ったのです

あれは、2週間ほど前
庭の芝生の上に大きな、りっぱな猫うんこ一つ
側を通り過ぎただけで、あんなに臭いなんて
それから数日後、その物体は見事につぶされていました
そうです、私以外の誰かがフンでしまったのでしょう

その日から玄関の辺りが、妙に臭ったのです
おそらく、猫うんこを踏んだすぐ後にココへ来たのでしょう
犯人はどの靴か、調べる勇気も無いまましばらくの間、
風に漂い、玄関から漂い、
芝生の上の本元さんから漂ってくる
異臭に悩まされる日々を送っていました

鼻の奥には今も、忘れることの出来ないアノ香り
そう、あのホルスタイン模様の猫のモノに違いありません
実際は数秒だったでしょう、両者の睨み合いは続き、
冷たい風に我に返った私が、ゴング代わりに戸を思い切り閉めると
その音に驚いたその猫は、南の方向へと逃げていきました

今現在、玄関は勇気を持った母の手によって
キレイキレイに掃除されて、平穏な日が訪れています

こんなことで尊敬されたくは無いかもしれないけれど
改めて母よ、ありがとうございます。



©Misyou Kiduki




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